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2017-04-14

Essays #15 / 事故

essay_15

Text written by Komatsu Hiroko

撮影は35mmモノクロ・フィルムで、24枚撮や36枚撮などパトローネ(写真機にフィルムをそのまま装填できる円筒形の容器)に詰められた状態で販売されているものではなく、長尺と呼ばれる100フィートのフィルムが缶に入って販売されているものを使います。フィルムローダーという装置を使って36枚撮の長さを詰め替え用パトローネに自分で詰めていきます。詰め替え用パトローネはプラスティック製で繰り返し使うことが出来ますが、耐久回数を超えて使用していると蓋の部分が外れやすくなります。蓋の部分が外れると光が入りフィルムが感光して黒くなり、結果としてプリントは感光した部分が白くなります。現在わたしが使っているパトローネのうち最も古いもので10年が経過しています。当然メーカー推奨の耐久回数よりも大きく上回って使用されているので、フィルムローダーやカメラからの脱着時にはいつでも蓋が開く可能性があります。常に開かないよう気をつけているので頻度は少ないものの、必ずパトローネの蓋が開いてしまう事故は起こります。蓋が開いたことで被害を受けるカットは、事故を起こしたフィルム1本(36カット)のうちで最初の1〜2カットに過ぎませんが、事故を起こしたフィルムも通常通りフィルム現像してプリントします。
撮影したフィルムはダークバッグと呼ばれる手を差し入れることのできる暗幕の袋の中で、リールと呼ばれる金属が渦巻き状になっているものに巻き付けます。金属をガイドにして巻き付けることでフィルム同士が密着せずに、現像液が隙間に流れてムラのないネガフィルムが仕上がることになります。以前はフィルムは印画紙より感度が高く少しの光でも感光するので安全のために夜間に暗室内でリールにフィルムを巻き付けていましたが、現在は量をこなすためにも明室で作業出来るようダークバックの中でリールにフィルムを巻き付けています。ダークバックの中は当然ですが狭いので手の動きが制限されるためフィルムがリールに上手く巻けずに密着し現像されない部分が出来るという事故が、暗室内での同様の作業と比較して起こりやすくなります。フィルム同士が密着してしまい現像されなかった部分は乳剤が残っていて光を通さないのでプリントされた印画紙は白くなりますが通常通りプリントします。
わたしが撮影に使用しているカメラ、LEICA M3は露出計を内蔵していないので、露出とシャッタースピードは勘で決めています。勘が大きくはずれることもありますし、撮影に集中してしまい2絞りや3絞り間違えることも多々あり、結果として一本のフィルムの中に濃いネガと薄いネガが混在している状態になります。一般的にテスト露光でネガの状態にあった露光時間を決めてからプリントしますが、このやり方だと一日に20枚程度しかプリント出来ません。大量に展示するために一日に100枚ほどプリントすることが多いので、当然テスト露光はせずに暗室でネガの状態を見て露光時間を勘で決めてどんどんプリントしてゆきます。前述の撮影状態から当然ネガの濃度が揃っていないのでテスト露光をせずにプリントの濃度を合わせることは非常に困難です。この方法では経験を積んでいってもプリントの仕上がりにはバラツキが生じますが、そのままのプリントを展示に使います。
こういう事故を積極的に作品に取り込んでいます。この際にとても重要なことは、事故を起こさないよう細心の注意をはらって作業することが前提であり「わざと事故を起こす」ことを絶対にしないことです。注意深い行動や行為を基本として、それに様々な負荷をかけることによって事故が起り得る状況をつくることで、作為から自由になれると考えています。