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2017-05-06

Essays #18 / タイトル

essay_18

Text written by Komatsu Hiroko

展覧会が決まり、展示を考えるとき、会場の大きさや形からインスタレーションを考えて、必要な写真の量を把握して、最後に展覧会のタイトルを決めます。
タイトルはとても重要です。普段からタイトルについては常に考えていて、言葉が思い浮かぶとメモをしておき、ときにメモを眺めて考えたり書き直したりを繰り返します。
このようによく考えて決めているタイトルですが、あまりその意味や理由について問われたことはありませんでした。わたしは日本語でタイトルをつけていますが、2015年にドイツのフォトフェスティバル、“6th Fotofestival” に参加するにあたり、タイトルの英訳が必要となりました。このときのタイトルは『生体衛生保全』で、良き理解者たちの協力を得て『Sanitary Bio-Preservation』と訳されました。
エンバーミングとは死体衛生保全のことで遺体に防腐処理を施しますが、わたしのタイトルは『生体衛生保全』で本来は遺体に施す防腐処理を生体に施すことについての考えです。わたしたちの食べている食品の多くは工場から来ていて防腐処理が施されています。マクドナルドのハンバーガーが腐敗する様子を定点写真に撮り作品を作ろうとした人は、1ヶ月経ってもハンバーガーが腐敗しなかったため作品にならなかったと語っていました。個人店でつくられた餅は一週間で黴びてひび割れるのに対し、工場から来た餅は一年経っても販売時と同じ状態です。わたしは撮影のために工業地帯をよく訪れますが、薬品や塗料工場の多数ある地域よりも、食品工場のある地域のほうが空気が悪く、眼・喉・鼻に強い刺激を受け涙や咳が止まらなくなります。現代の日本人は火葬せずに埋葬したら腐敗しないかもしれません。ダニエル・シュミットの『ラ・パロマ』は好きな映画のひとつですが、美しい女性が腐敗しない肉体となって埋葬されるために、自ら薬を調合して飲む場面が想起されます。
言葉を別の言語に置き換える作業にあたり、いちど組み立てた言葉を解体する作業をしました。このとき言語化したためにタイトルを決めるときの自分の考え方がより明快になったように思います。ドイツの建築と芸術のWebマガジン “deconarch.com” からインタビューを受けた際にも、タイトルについて語っている部分があります。