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2017-06-10

Essays #22 / ブロイラースペース 2

essay_22Text written by Komatsu Hiroko

「ブロイラースペース」で先輩方の企画展として行われた幾つかの展覧会では、桜上水という他のギャラリーや施設から離れた不便な場所にもかかわらず多く人々が来場してくれました。トークイベントなども企画したので、会期中は常に賑やかで華やかな印象でした。しかし『Monthly Exhibition』として10回行われた、わたしの方の展示に来てくれる人はほとんどいませんでした。
運営していた一年の間には、例えば東日本大震災の翌日に行った搬入では、交通機関がマヒしていたため、ロール印画紙を担いで僅かに動いていたバスや電車を乗り継いで、普段だったら1時間ほどの道のりを大回りして移動し、ほぼ半日かかって「ブロイラースペース」にたどり着くなど、やめても不思議ではないような状況もありましたが、やめることに思い至りませんでした。
今考えると企画展とのギャップや、意外と頻繁に起こる大小の不測の事態に意気消沈しても良さそうなものですが、自分の作品をかためていくことを目的とした実作業に追われて落ち込んでいる時間がなかったことと、新しい展示のアイデアを具現する歓びが強かったことが幸いして最後までやり通すことができたのだと思います。やり通したことで、安定した撮影ープリントー展示のサイクルができ、作品としての基となる、写真を極端に大きく伸ばしたり、小さい写真を会場に大量に持ち込むことで写真に写っているものを見せないようにすること、イメージではなく物質としてそこに配置することといったインスタレーションの方法を固めることができたと思っています。
ひとつの区切りとして、展示した写真の中でロールに大きく伸ばしたものと会場写真、展示構成内容を10回分まとめた冊子を作り、さらに冊子の刊行にあわせて、10回分の展示した全ての作品で構成する展覧会を自身で企画することにしました。マルグリット・デュラスの映画タイトルから引いて、冊子・展覧会共にタイトルは『ブロイラースペース時代の彼女の名前』としました。
会場は10回分の展示作品が入りきり、借りることができる場所として、展示床面積が340㎡で展示壁が141mと大変に広い目黒区美術館の区民ギャラリーにしました。ここは搬入日も含め6日間しか借りることができないので、多くの人に見てもらうためにも少しでも長く展示を公開できるように、搬入も作品の一部であると考え、公開搬入としました。
区民ギャラリーの規約で、必ず利用申請者が会場にいる必要がありましたので、毎日会場に開場から閉場までいましたが、やはりほとんど展示に来てくれる人はいませんでした。しかし自身で自身の作品を長い時間眺めて過ごすという贅沢な時間を得ることができました。