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2016-03-13

Quotation #5 / 創造と破壊

the-brand-of-prevention_20160312

インタビュー/小松浩子「landscapestories.net」を翻訳
Text written by Komatsu Hiroko : landscapestories.net
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“撮影している場所は主に東京近郊の工業地帯や工事現場です。撮影している対象はこれから使われる資材であったり、既に使い終わった廃材であったりします。資材であっても廃材であっても、建造物などに組み込まれる前の状態であるため、本来は覆い隠されている構造があらわになっています。コンクリート、鉄、材木、革、石、ゴム、プラスティック、布、砂、鉛等々の夥しい種類の物質が、様々な大きさと形状で、また様々な状態でそこにあります。これら物質が焼き付けられた印画紙である写真からは、作られている途中なのか、壊されている途中なのか判断がつかないことから、創造と破壊とが同時にある状況を作ることを意図しています。
本来の用途や目的から切り離された夥しい種類の物質は、私がカメラを構える位置や角度をほんの少し変えるだけで実に様々な表情を見せるので、同一の場所であっても少しずつ移動しながら大量にシャッターを押しますが、展示ではあえて撮影した順番に並べないようにしています。時間は過去—現在—未来というように直線に進行するものではないと考えています。一般的な展示に見られるように、鑑賞者が展示会場の入り口から順番に一枚ずつ写真を見ていくという動きも「直線の時間」と言えると思います。私の1000枚、2000枚という大量の8×10の写真でグリット状に床や壁を隙間なく埋め尽くす展示では、この鑑賞者の「直線の時間」と言える視線の運動を妨げます。鑑賞者が鑑賞者の決めた順番で写真を見ようとしても上や下の写真に視線を引っ張られて「直線の時間」を維持することは困難です。また鑑賞者は私の展示会場の至る所で同一の場所で撮られた良く似た、しかし異なる写真に出会い、強制的に時間を引き戻されます。また近作では過去の展示会場を8ミリで撮影した映像を組み込んだ展示も行っており、過去—現在—未来が混在する状況を作ることを意図しています。
私が撮影している工事現場や工業地帯では、透明の薄いプラスティックのシートで包まれた資材をよく目にします。大きいものは長さが10メートルはあろうかという鉄柱であったり、小さいものは数センチの歯車であったりが、同じ透明の薄いプラスティックのシートで梱包されています。私の写真の多くにもこのプラスティックシートで梱包された資材が写っています。私の展示では20×24の写真を厚みのある発泡スチロールと一緒にプラスティックシートで梱包し、床や壁に固定しています。撮影の時に外側からプラスティックシート越しに対峙した資材を写真に焼き付け、その写真を展示する時にプラスティックシートで梱包することで、今度はプラスティックシート越しに景色を見ることになります。これによりプラスティックシートを境界として、視線の方向が反転します。見ることが見られることと同時にある状況を作ることを意図しています。
私の展示では展示会場の壁面や床を印画紙で埋めつくすだけではなく、幅1080mm、長さ30Mの印画紙をワイヤーで吊るしたり、床に投げ出したりします。鑑賞者は印画紙が遮蔽物となり展覧会場を一望に収めることが出来ず、展覧会場の中、つまり写真の中を歩き回ることになり、鑑賞者の立つ位置や視線の方向によって絶えず目にするものが異なります。展覧会場は見るだけの場ではなく体験する場だと考えています。”