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2016-04-17

Quotation #10 / 帝国主義的な暦

the-brand-of-prevention_20160417

ジャン・ジュネ 「……という奇妙な単語」より引用
Text quoted from “L´étrange mot d´…” by Jean Genet

“演劇の目的は、なかんずく、時間から、歴史的と言われているが実は神学的な時間から、私たちを逃れさせることだろう。演劇的出来事が始まるやいなや、流れゆく時間は、目録に載っているどんな暦にも属さなくなる。キリスト暦からも革命歴からも、それは逃れる。歴史的と言われる時間ーー御降誕と名づけられている、神話的で論争の絶えないある出来事から出発して流れている時間のことを言っているのだがーーが、観客の意識から完全に消え去りはしないとしても、ある別の時間、観客の一人一人が十全に生きる別の時間がそこには流れていて、初めも終わりもないがゆえに、社会生活に必要な歴史的慣習をそれは吹き飛ばし、ゆえに、社会的慣習をもそれは吹き飛ばす。そしてそれも、どんな無秩序でもというわけではなく、ある解放の無秩序を益するーー劇的出来事は、歴史的に計算された時間の外、それ自身の歴史の上で宙吊りになっているのだからーーのであり、目眩を起こさせるようなある解放を益するのである。
伝説的な受肉に起源を持つような一つの紀元に世界のあらゆる民をはまり込ませるため、キリスト教的西洋は狡知をめぐらし、おのれになし得るかぎりのことをする。西洋だけにかかわりがあるようなある出来事から出発して名付けられ数えられた時間に捕らえられることで、世界はこの時間を受け入れるなら、諸々の儀式にしたがってこの時間を刻むようになるおそれがおおいにあり、そうなれば、世界全体がこうした儀式に捕らえられてしまうことになるだろう。西洋が世界全体に向かってなそうとしていることは、それゆえ、「暦の一撃」以外のものではない。
ゆえに、おのれを帝国主義的に押し付ける暦類とは無関係に、暦類がそこから出発して成立する「御降誕」を増加させることが緊急に必要であると思われる。キリスト暦やいと疑わしき御生誕から出発して数えられたこの時間から帰結するものを破滅させるため、どんな出来事も、内密の出来事であれ公式の出来事であれ、多数の暦を生み出さなくてはならないとさえ私は考えている。”