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2016-05-14

Quotation #14 / 名前と番号だけの存在

the-brand-of-prevention_20160514

トニー・パーカー「殺人者たちの午後」より引用
Text quoted from “LIFE AFTER LIFE:Interviews with Twelve Murderers” by Tony Parker

“——刑務所に入って間もない頃でしたが、僕の内部で、何が起きたのかわからない、いや実際には何も起こらなかったんじゃないか、と自分に言い聞かせようとするとても強い感情が生まれました。あれは他の誰かに起こったもので、自分とはまったく何の関係もないことなんだって。そんなことを言うと、まるで自分が統合失調症だと言っているように聞こえるかもしれませんね。もっとも、統合失調症がどんなものか知らないんですけどね。誰も僕が統合失調症だなんて言う人はいなかったし、診断してもらったわけじゃありませんから。
こんなことを言うと、矛盾しているように聞こえるかもしれませんが、僕が気になって仕方がなかったのは、自分が無に近い存在なのではないかということでした。裁判を受ける前の数ヶ月、僕は刑務所に拘留されていましたが、誰ひとりとして手紙をよこさず、面会にも来ませんでした。僕にはこう思えたんです。誰も僕のことを知らないし、知りたいと思ってもいない、って。とにかく、こういった僕の存在を無視する一連の出来事を見ていると、外の世界において、僕はまったく存在してないも同然のようでした。刑務所では番号を与えられ、名前と番号だけの存在になっていました。裁判官が僕に終身刑を言い渡したとき、それに何かの意味があるとは思えませんでした。あえて言えば、ひとりの人間としての僕にとって、まったく関係がないとすら思えました。僕は自分が終身刑になって当然と思っていたし、実際そうなるだろうと思っていました。でも、刑期をある限定された歳月として考えたことはありませんでした。理由は特にありません。僕にとって終身刑とは一生のもので、もうそれで終わりというものでした。もし僕が四十のときに死んだら、それが刑期ということになるんだろうし、四十五で死んだら、それまでが刑期ということになる。それ以外には考えられなかったし、違う考え方があるなんて思いもしませんでした。
どうしたらうまく説明できるかよくわかりません。そう、こんなふうに言ったらいちばん近いのかな。あなたは誰かに別の国に連れていかれる。そして、そこに着くと、もうどこにも行くことはできない、ここで一生暮らすんだ、と言われるんです。僕が連れていかれたその別の国というのが刑務所でした。僕は刑務所の市民になり、言葉を覚え、習慣に馴染み、よそのことはまったく知らないままそこで暮らしていくんです。それをつらいとは思わなかったし、外の生活に未練があったわけでもありません。僕は全てを受け入れていましたが、なんと言うか、その前に、これが自分に本当に起きていることとは思えなかったんです。”