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2016-06-25

Quotation #20 / 緩慢な死

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コンラート・ローレンツ『ソロモンの指輪ー動物行動学入門ー』(日高敏隆訳、ハヤカワ文庫NF、1998)より引用
Text quoted from “King Solomon’s Ring” by Konrad Lorenz

「飼いやすい」という性質は、「飼える」とか、「抵抗力がある」とかいう概念とはまったくきりはなして考えるべきものである。われわれが科学的な意味で生物を「飼う」といったならば、それは、狭いあるいは広い檻の中で、その動物の全生活環境をわれわれの目の前で展開させる試みをさすのである。けれどもじつに困ったことに、たんに抵抗力が強くて死ににくい動物、もっとはっきりいうならば、死ぬまでに長い時間がかかるにすぎない動物を「飼える」というのがふつうである。実際には死ににくいだけで、けっして手数のかからぬものでもなんでもない「飼える」動物の典型的な例は、ギリシャリグガメである。無知な飼い主がしつらえた不十分な条件のもとでも、このあわれな動物は三年、五年、あるいはもっと長い間生きている。そしてもはや回復のしようもないほどにまいって死ぬ。だが正確にいえば、彼女は「飼われだした」その日から死にはじめているのである。